朝潮の「あしたは思い出の一番にしたい」は角界の掟破り 願いは黙っていれば実現した

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 2日に67歳で亡くなった元大関朝潮、先代高砂親方の現役引退は1989年春場所だった。前場所は8勝でかど番を脱したが、大関在位36場所目の33歳で迎えたこの場所は初日から4連敗した。

 その夜、朝潮は報道陣に引退の意思を明らかにする。ところが翌朝の各紙に「きょう引退表明」「きょう限り引退」と奇妙な見出しが載った。朝潮が5日目も取ってやめたいと言ったからだ。

「あしたは思い出の一番にしたい」「もう一番だけ取りたい」

 だが、その18年前に大鵬が同じ希望を述べて相撲協会に止められた。闘志が萎えた者が取るのは相手に失礼。引退の意思表示をしたら土俵に上がってはならぬ。大鵬でさえ却下された願いは、やはり通らなかった。

 兄弟子の高見山は84年夏場所、十両下位で翌場所の幕下転落が確実になっても「引退」を口にせず、千秋楽までファイティングスピリットを見せたが、新聞は客観情勢で「今場所限り」と書いた。このため現役姿の見納めにと、高砂部屋の朝稽古にカメラを持ったファンが訪れ、高見山は「ボク、まるで最後のSLネ」と苦笑したものだ。

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